理事長ご挨拶

日本外科教育学会のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。本学会は前身の日本外科教育研究会からの発展をうけ、2024年10月に一般社団法人となり、現在私が理事長を務めさせていただいております。
本学会は定款にも記載してありますように「外科教育に関する研究の進歩、発展および普及、会員相互の連絡および親睦ならびに国際的交流を図ることにより、外科医療の質向上に貢献すること」を目的として活動する学術団体です。
本邦における外科教育あるいは外科医の教育は、長らく大学医局やその関連施設によって担われる部分が大きく、日本人の職人気質と相まって徒弟制度に近い指導が行われてきました。したがって施設や地域により、かなり異なったタイプの外科医が育成されてきた歴史があるのも事実です。一方で各外科系関連学会はそれぞれの専門医制度を確立し、外科医療を担う質の高い専門医の育成に資してきました。近年では、本邦も欧米にと同様に Evidenced based Medicineや診療の標準化が重視され、診療ガイドラインの整備も着実に進展しています。しかしながら外科系医師の教育に関しては、いまだ完全に標準化されているとは言い難い状況にあると考えます。
北米における外科教育は豊富な症例経験をベースしている部分も大きいですが、習得すべき術式や診療経験が設定され、それらをきちんとチェック・検証する機能が整備されています。したがって育成される外科医は施設や地域による差がなく、トレーニングを修了した段階ですでにレジデントを教育する能力を身に着けていることが求められます。またコンピテンシー(Competency)が重要視され、この場合のコンピテンシーとは特定の業務(外科医療の現場)での高い業績や成果(患者アウトカム)を出すために必要な知識や技術、資質を総称した行動特性とされており、人材育成(外科医教育)の効果測定をする時にも活用されています。
おりしも本邦においても日本専門医機構が設立され、これまで各学会に任されていた専門医の育成とその認定が第3者機関としてのチェックが機能する状況になりました。この機運に乗じて、本学会としては、欧米の外科教育を参考にしつつも、日本の文化や臨床現場に適した外科教育や外科医の育成方法を確立・提案し、外科医療の質向上に貢献したいと考えております。
外科教育は、単に教育だけでなく研究としての側面も持ちあわせています。ぜひ本学会にご加入いただき、外科教育の面白さ、やりがい、研究としての奥深さを知っていただくとともに、一緒に活動できる仲間になっていただければと考えています。
一般社団法人日本外科教育学会
理事長 家入 里志