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日本外科教育学会の設立について

設立背景

日本では長年にわたり、外科医教育は医学教育全体の一部として扱われてきました。各外科系学会にも教育部門は設けられていたものの、若手医師や学生に向けた外科教育を専門とする学術団体は存在しませんでした。

一方で、北米の Association for Surgical Education(ASE) や Association of Program Directors in Surgery(APDS) のような専門組織が参考モデルとして認識されるようになり、日本国内でも、外科教育に特化した組織の必要性が次第に高まっていきます。

2016年度に行われた卒後外科研修の実態調査では、外科専攻医のうち、手術室外で定期的に教育を受けていたのはわずか13%。さらに、半数以上の修練医が必要な手術手技に自信を持てていないという現状が浮き彫りになりました。

こうした状況を受け、外科教育の質の向上と、外科医の育成を目的として、2014年に「日本外科教育研究会(後の日本外科教育学会)」が誕生しました。

初期の取り組み

設立に大きく貢献したのが、北海道大学大学院外科学講座消化器外科学Ⅱの倉島 庸です。2009年からカナダ・マギル大学で3年間、外科教育研究に取り組みました。帰国後の2012年以降、その知見を国内の学会や講演会で積極的に共有し始めます。

その活動を通じて、全国の医師や教育関係者とのネットワークが形成され、2014年7月26日、北海道夕張市にて「第1回外科教育サミット」が合宿形式で開催されました。医師、臨床工学技士など46名が参加し、これが研究会の出発点となります。

以降、学術集会は毎年夏、札幌市で開催されるようになりました。当初は啓発と普及を目的とし、ワークショップや基調講演が中心でしたが、年々、外科教育における課題や研究成果を共有・発表する重要な場へと発展していきます。

新型コロナウイルスの影響により、一時的にオンライン開催となったものの、2023年までに10回の学術集会を実施。いずれも倉島が中心となり、活動をけん引してきました。

法人化と現在

2023年12月、日本外科教育研究会は任意団体「日本外科教育学会」へと移行し、法人化に向けた準備が本格化しました。ところが、法人化の最終段階にあった2024年8月18日、倉島が不慮の事故により急逝するという、衝撃的な出来事が起こります。

まさに学会の柱を失う事態となりましたが、倉島が定款に定めた設立時役員や顧問たちを中心に、その遺志は引き継がれ、法人化の手続きが継続されました。

2024年9月、第11回学術集会は倉島の不在下で初めて開催されました。会場は札幌、当番世話人は北海道大学大学院泌尿器科学の安部 崇重が務めました。

そして2024年10月、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児外科学の家入 里志を設立時代表理事として、「一般社団法人日本外科教育学会」が正式に発足。新たな一歩を踏み出しています。

日本外科教育研究会の設立時の主な使命

  • 外科教育に関する情報共有
  • 外科教育者の育成
  • 外科教育に関する標準プログラムとツールの開発
  • 外科教育に関する研究の促進